今日の読了

ブダペストの古本屋 (ちくま文庫)

ブダペストの古本屋 (ちくま文庫)

別用で出向いた仙台で,「古本縁日」をのぞく.読んでいたのがこの本なのは,たまたま(^^;).会場の2箇所とも珈琲が飲める古本屋さんだったのに,飲みそびれたのは残念.来月も仙台に行くから,そのときにするか.
それはさておき『ブダペストの古本屋』.著者は作曲家柴田南雄の従兄弟で,第二次大戦中も留学したブダペストから,柴田にせっせと楽譜を買い送っていた人,とは柴田の本で知り,またハンガリー語研究の泰斗であったことはぼんやりと知っていたが,最初,東京大学の図書館にいたひとだとは,この本で初めて知った(246頁−249頁).司書官として「河合,長沢,小野」の3氏が姓のみ挙げられているが,これは河合博と小野則秋と,「長沢」は誰だろう? 当時はのち女優になる荒木道子荒木一郎の母である)が目録カードを書いていたり,古川ロッパの弟増田七郎も東大の図書館にいたり.和書目録部の古参としてあげられている増田七郎については,東京帝国大学附属図書館司書増田七郎 - 神保町系オタオタ日記で取り上げられているが,ロッパの実家である加藤家は父親の照麿男爵が跡継ぎ以外はみんな養子に出す方針だったとかで(小林信彦『日本の喜劇人』),僕が知ってる限りでは次男が京極伯爵家に(京極高鋭),四男が浜尾男爵家に(浜尾四郎),六男が古川家に(古川ロッパ)に養子に出されている.長男の加藤成之は東京藝術大学の初代音楽学部長で,柴田南雄『わが音楽わが人生』に拠れば「乾燥ロッパ」と渾名されていた由.
図書館とロッパにこだわりすぎた(^^;).この本は,そのようなところに拘泥して読むべき本では無く,著者が古き懐かしきブダペストを回想したり,懐かしきブダペストの面影を収録されたエッセイが書かれた時点の現在に再び見出したりするときのささやかな喜びを,著者とともにささやかに味わうための本である.